鏡よ、かがみ。

夜は更けゆく。
美しい旋律にのって、静かで確かな強いひと。

その奏でる音色にすべての人は

どこかへと舞い昇るような心地がしてしまって

いつまでもこの夜が続くのだと

何度も杯をかわした。
夢から覚めるのが恐ろしいほどに

だれもがこの目の前の光景に夢中になろうとしていた。

そのとき

誰もを映す鏡に

自分の姿はどこにもなかったと

ひやりと目が覚めた。