宵山蜃気楼。

宵山蜃気楼
誰がのぞみか知らねども 互いの姿 しばしとどめむ


宵山の幻想的な夜には
かつての想い人の姿を
目にすることがあるという

私は宵山の帰り道
ずいぶん向こうのほうに
懐かしい彼を見つけてしまっていた

この日声をかけなければ

最後という気がしていた

向こうの彼も
ふと、ちらりと後ろを振り返った
再度。そしてまた。

なつかしくも
はるか昔の想いの中の彼
それこそが幻想的な現れ。

互いに声をかけるわけもなく

私は彼を許せたのだろうか

宵山の夜よ。
彼は、同じく私を見つけたのだろうか。