くちなしの香

詩仙堂 くちなしの花 2013.7.01

 

まとわりつくようなくちなしの香。

梅雨まっただ中の京都

街のかたすみで

涼を求めた庭園の軒先で

その場の空気をのっとるかのように

突如現れ存在感を放つ花。

 

この花に気づけば

ふと空恐ろしい心地がする。

 

この香で思い出さずにいられない高貴な女人

六条の御息所。

このうっとうしいほどまとわりつく香り

御息所の思い詰められた心情に寄り添ってはなれない

 

苦しいほどの恋をしていたときに

その気持ちのひだに

そっと触れたような気がしたけれど

それはあくまで美しい絵巻物の中に

自分を沈めてみた

というだけのこと。

 

私には

妖艶で

もろく

なまめかしいその花に

まだ恐れをぬぐいさることができない。

 

“梔子”という字

どこかドクロのように見えて。

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