雲の階段

伊吹山 山頂近くにて

 

夏はめくるめく あざやかな花火

余韻を残して 置いてきぼりをくらったようだ。

 

 

日本のいろんな山を登ったけれど、こんなにも高い世界に来たのは初めてだった。

もっと高みへ もっと空の上から

雲の階段を昇って

見たことのない植物と虫たち

人間だけが何も変わらずに

 

あとどのくらいで頂上なのか

なにも知らず

 

白い石灰岩のつるつるした石ころの道を

ぼんやり列をつないで登っていく

 

不安は不思議となくて

時折すごい速さで湧き上がる雲にため息をついて、

はるかむこうの琵琶湖の水面の銀色の輝き

山の峰々の間に巣食うように築かれた小さな集落を見つめて

自分との間の遠近法というものが崩れたまま

どこまでも空を昇っていきたい衝動にかられる

 

神話のなかに入り込んだ世界

そのまま

 

神様に限りなく近いような

雲間に顔をのぞかせる太陽の銀色

 

確かなことなんて

なにひとつないのだから、

自分は自分の選んだ道をただまっすぐ歩くだけだ。

 

山をのぼりきったら、

そこには何もなくて、

真っ白な雲の中

お花畑

 

かき消される人々の声は遠く

真っ白な空に銀色の鏡のような太陽が

また、

いちばん眩しい光を放って顔をのぞかせた。